系統用蓄電所は、電力系統に接続し、必要に応じて電気を充電・放電する「巨大なモバイルバッテリー」のような電力インフラです。

太陽光・風力発電設備と送電設備につながる系統用蓄電所のイメージ
電力系統に接続された系統用蓄電所のイメージ

しかし、土地を取得して蓄電池を設置すれば完成するわけではありません。用地・系統・設計・調達・施工・受電・運用開始まで、多くの工程と専門企業によって成り立つプロジェクトです。

この記事で分かること

  • 系統用蓄電所が必要とされている理由
  • 系統用蓄電所が担う2つの役割
  • 蓄電所プロジェクトが成立するための条件
  • 開発から運用開始までの全体工程
  • プロジェクト全体を統括する必要性

系統用蓄電所とは

系統用蓄電所とは、電力会社の送配電網である「電力系統」に直接接続し、電気を充電・放電する設備です。

身近なものに例えるなら、電力系統につながった巨大なモバイルバッテリーです。ただし、単に電気を貯めておくための設備ではありません。

電気が余っているときに充電し、必要とされるときに放電します。さらに、電気の需要と供給の間に瞬間的なずれが生じたときには、電力系統の状態に応じて充放電します。

こうした働きによって、電気を必要な時間へ移すとともに、電力系統の安定を支えています。

系統用蓄電所は、電気を安く買って高く売るためだけの設備ではありません。再生可能エネルギーの拡大を支え、電力の需要と供給を調整するための電力インフラです。

系統用蓄電所が担う2つの役割

系統用蓄電所には、大きく分けて2つの役割があります。

電力量を必要な時間へ移す

一つ目は、電気が余っている時間に充電し、必要とされる時間に放電する役割です。

例えば、太陽光発電による供給が多い昼間に電気を貯め、需要が増える夕方以降に放電します。電気を「作られた時間」から「必要な時間」へ移す機能です。この役割は、Energy Shiftingと呼ばれます。

日本卸電力取引所(JEPX)などを利用し、価格が安い時間帯に電気を購入して充電し、価格が高い時間帯に放電・売却する運用も、この役割に含まれます。

瞬間的な需給変動を調整する

二つ目は、電気の需要と供給の間に生じる瞬間的なずれを調整する役割です。

電力系統では、電気を使う量と作る量を常に一致させる必要があります。両者のバランスが崩れると、周波数が変動し、電気の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。

系統用蓄電所は、こうした変動に応じて充放電し、電力系統のバランス維持に貢献します。この役割は、Grid Balancingと呼ばれます。

JESDIが開発する蓄電所では、このGrid Balancingに対応する需給調整市場、とりわけ一次調整力を主要な運用機会として位置づけています。

電力量の時間移動と、瞬間的な需給変動の調整を示す図
電力量の時間移動と、瞬間的な需給変動の調整

なぜ再生可能エネルギーに蓄電所が必要なのか

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が変動します。

太陽光発電では、晴れているときに多く発電できても、雲がかかることで出力が低下します。風力発電も、風の強さによって発電量が変わります。

再生可能エネルギーの導入量が増えるほど、こうした変動を電力系統全体で調整する必要性も高まります。

従来は、火力発電や揚水発電などが需給調整の多くを担ってきました。そこに、短時間で充放電できる蓄電池を加えることで、変動に対してより柔軟に対応できるようになります。

系統用蓄電所は、再生可能エネルギーそのものを発電する設備ではありません。しかし、変動する再生可能エネルギーを電力系統の中で有効に活用するために、重要な役割を担う設備です。

土地と蓄電池だけでは成立しない

系統用蓄電所は、土地を取得して蓄電池を置けば完成するものではありません。プロジェクトとして成立させるためには、少なくとも次の4つの条件を一体で検討する必要があります。

01 用地

配置面積に加え、法令、権利関係、接道、造成、地盤、排水、騒音などを確認します。

02 系統接続

接続容量、工事負担金、工事内容、連系までの期間などを確認します。

03 施工可能性

道路幅員、旋回、クレーン配置、工事工程など、実際に建設できる条件を確認します。

04 事業性

土地・設備・工事・系統接続・保守の費用と、市場運用による収益を評価します。

この4つのうち、一つだけ条件が良くても、蓄電所プロジェクトとして成立するとは限りません。用地・系統接続・施工可能性・事業性を、個別ではなく一つのプロジェクトとして考える必要があります。

開発から運用開始までの全体工程

PHASE 01|DEVELOPMENT

用地と系統条件を評価し、プロジェクトとして成立する可能性を確認します。土地のデューデリジェンス、搬入経路、造成条件、電力会社との系統協議などを進めます。

PHASE 02|COORDINATION

プロジェクトに関わる専門企業を選定し、役割、責任、工程を整理します。事業者、EPC、設備メーカー、電力会社、アグリゲーターなど、それぞれの業務を一つの計画としてつなぎます。

PHASE 03|INTEGRATION

蓄電池、PCS、EMS、受変電設備、土木設備などを、一つの蓄電池システムとして設計・調達・施工します。個別の設備を設置するだけでなく、仕様、通信、制御、保護、現場条件を整合させる必要があります。

PHASE 04|MARKET ENTRY

完成した設備を電力系統へ接続して受電した後、試運転、通信確認、制御試験、市場参入試験などを進めます。これらを完了して初めて、蓄電所は市場で運用できる状態になります。

受電はゴールではない

蓄電所に電気が流れ、設備を動かせる状態になることを「受電」といいます。しかし、受電した瞬間から市場で運用できるわけではありません。

受電後には、蓄電池、PCS、EMSの動作確認、アグリゲーターとの通信確認、市場参入に必要な試験などが残っています。

こうした工程が完了しなければ、設備が完成していても、市場から収益を得ることはできません。そのため、受電日だけでなく、実際の運用開始日までを見据えて工程を組み立てることが重要です。

なぜプロジェクト全体の指揮者が必要なのか

系統用蓄電所の開発には、プロジェクトオーナー、土地所有者、電力会社、EPC、設備メーカー、EMS・PCS事業者、アグリゲーター、行政、金融機関など、多くの専門企業や関係者が携わります。

それぞれが高い専門性を持っていても、個別に業務を進めるだけでは、一つの蓄電所として完成するとは限りません。

設備仕様の変更が、土木設計に影響することがあります。電力会社から示される要件によって、設備の選定や設計条件が変わることもあります。また、アグリゲーターの運用要件は、EMSやPCSの仕様・設定にも影響します。

会社と会社、工程と工程の間で情報が分断されると、設計変更、追加工事、納期の遅れ、受電後の手戻りなどが発生します。だからこそ、プロジェクト全体を俯瞰し、各専門企業を一つの方向へ動かす役割が必要になります。

JESDIが担うプロジェクト・オーケストレーション

日本蓄電開発機構(JESDI)は、蓄電池メーカーやEPCとは異なる役割を担い、系統用蓄電所プロジェクト全体を統括します。

土地・系統の評価から、EPCの管理、設備の統合、試運転、アグリゲーターとの連携、運用開始までを横断して管理します。

JESDIが重視しているのは、個々の工程を完了させることだけではありません。運用開始日から逆算して初期段階でリスクを洗い出し、設計・調達・施工・市場参入準備を連動させることです。

このプロジェクト全体を指揮する役割を、JESDIでは「オーケストレーション」と呼んでいます。

JESDI WAY
良い土地、良い蓄電池、良いEPCを個別に選ぶだけでは、良い蓄電所は完成しません。それぞれの専門性を一つのプロジェクトとして統合し、運用開始まで動かすことが重要です。

まとめ

系統用蓄電所は、電力系統に接続し、電気を充電・放電する電力インフラです。その役割は、電気を必要な時間へ移すことだけではありません。再生可能エネルギーの拡大に伴う需給変動に対応し、電力系統の安定を支える役割も担っています。

また、蓄電所は土地と設備だけでは成立しません。用地、系統接続、施工可能性、事業性を検証し、多数の専門企業をつなぎ、設計・施工・試運転・運用開始までを一つのプロジェクトとして進める必要があります。

系統用蓄電所の価値は、設備を完成させることだけではなく、実際に市場で運用できる状態まで到達して初めて生まれます。