蓄電所の通信・制御は、なぜ難しいのか――PCS・EMS・アグリゲーターをつなぐ実務

つながることと、正しく動くことの間を整える。

電池が動いても、PCS・EMS・アグリゲーターが正しくつながらなければ市場では動きません。通信・制御の実務を解説します。

この記事でわかること

  • 通信がつながることと、正しく制御できることの違い
  • PCS・BMS・EMS・アグリゲーターの役割
  • 符号・計測時刻・応答時間を合わせる実務
  • 異常の原因を切り分けるための設計と記録
  • 愛荘町のHuawei設備で実践した特別な接続構成

通信と制御を理解する

JESDIの視点

ネットにつながったのに、思ったとおり動かない

蓄電所の通信というと、回線を引き、機器を接続する工事を想像するかもしれません。しかし、それは入口です。

通信先から指令が届いていても、単位や符号の解釈が違えば、設備は意図した動きをしません。残量の計算や設定値が合わなければ、必要な出力を出せないこともあります。

通信の接続と、制御の整合。この二つを分けて確認する必要があります。

どの機器が、何を受け取って動くのか

蓄電池のBMSは、電池の残量や温度などを把握します。PCSは、交流と直流の変換や充放電を実行します。EMSは、電池の状態や運用条件を踏まえて設備を制御します。

アグリゲーターは、市場運用に必要な指令や設定、状態・実績データをEMSとやり取りします。システム同士が情報を渡すための窓口が、APIです。

JESDIが連携するHOBE ENERGYとRUTILEAでは、この接続を初期段階から設計しています。可能な範囲でソフトウェアによる対応を進め、現地に追加する機器を抑えながら、運用変更や改修に対応しやすい構成を目指しています。

この三社の体制は、設備と運用をどうつなぐか、誰がどの確認を担うかという試行錯誤を重ねて整えてきました。HOBEは、セルの選定からモジュール・ラック、自社開発のBMS・EMSまでを設計し、必要に応じて構成や制御を見直せます。

RUTILEAが求める運用と、HOBEの機器設計を、JESDIが初期から一緒に進める。導入時の接続だけでなく、その後の改修・保守まで見通して設計を調整できることが、長期運用を支えます。

なお、一次調整力の周波数への応答は、設備自身が周波数を検知する自端制御です。すべての動作が遠隔からの個別指令で始まるわけではありません。[電力需給調整力取引所のFAQ](https://www.eprx.or.jp/contact/jukyuchoseishijo/faq.html)

通信と設備を一体で考える。指令・設定・設備の状態をそろえ、全体として正しく動かす。(概念イラスト)
通信と設備を一体で考える。指令・設定・設備の状態をそろえ、全体として正しく動かす。(概念イラスト)

符号・時刻・応答時間を、同じ意味にそろえる

充電をプラス、放電をマイナスとする機器もあれば、逆の定義を使うシステムもあります。単位がkWなのかMWなのか、計測値がいつの状態を示すかによっても、受け取る意味は変わります。

EMSとアグリゲーターの間では、充放電の符号、計測時刻、データの更新周期、指令に対する応答時間をそろえます。通信が届いたという確認に加え、その内容どおりに設備が動き、正しく測れていることを確かめます。

JESDIは、対象市場の計測要件に合うトランスデューサーも確認します。これは電力などの状態を制御・記録に使える信号へ変える計測機器です。指令、設備の動作、計測値を同じ時刻で突き合わせ、運用側と設備側が同じ事実を見られる状態をつくります。

JESDIの視点

本当に差が出るのは、異常が起きたとき

通常の充放電ができることだけでは、確認は終わりません。

通信が途中で切れたら、直前の指令を続けるのか、停止するのか。設備が異常状態のときに制限の信号が来たら、どの制御を優先するのか。復旧したら自動で戻すのか、現地の確認が必要なのか。

JESDIが関わった確認では、異常状態で必要な抑制動作にならない問題を見つけ、メーカーへ修正を依頼した経験があります。通常時だけを動かしていては、見つけにくい問題です。

HOBE ENERGYとRUTILEAの連携でも、こうした異常時の扱いを含めて設計・検証します。長く運用するインフラだからこそ、うまく動くとき以外の姿を確認します。

設備側と運用側が、同じ記録で原因を調べる

問題が起きたときは、どの指令を送り、何を受け取り、設備がどう動いたかを順番に追います。通信、機器の設定、制御、計測を同じ時刻の記録で照合すれば、確認する範囲を絞れます。

JESDIの案件では、RUTILEAが市場参入に必要なログの取得と審査対応を担い、HOBE ENERGYが設備側の確認・対応を行います。JESDIは両者の情報と現場の状況をつなぎ、次の作業と期限を決めます。

担当を定めたうえで、一緒に原因を調べる。日常の連携が、異常時の切り分けと対応の速さにもつながります。

JESDIの実践

運用開始から逆算して、試験と接続を準備する

受電前に、設定、回線、データ項目、試験手順と担当をそろえます。受電後は、実際の充放電や制御、必要な停止・復帰の動作を確認し、審査へ渡すデータを取得します。

JESDIは、メーカーとアグリゲーターを一つのチームとして動かし、速く確実に確認できる方法を先に整えます。障害が起きにくく、起きた際にも原因を発見しやすい設計まで含めて考えます。

必要な確認を省くのではなく、現場で確認方法を考え始める時間や、情報を待つ時間を減らすことが、安定した早期運用開始につながります。

愛荘町で実践した、EMSを介さない個別設計

滋賀県愛荘町のHuawei製蓄電システムでは、JESDIがRUTILEAと連携し、通常は間に置くEMSを使わず、RUTILEA側から蓄電システムへ直接接続して動作させる設計を実践しました。

狙いは、通信や制御の受渡しの回数を減らして構成を簡略化し、エラーの抑制と、異常が起きた際の原因の切り分けをしやすくすることです。接続の方法を既成の形に当てはめるのではなく、実際の設備と運用の条件から組み立てました。

これは愛荘町のHuawei設備に対する個別の設計例です。その後の案件ではEMSを使っています。EMSを省くこと自体を標準とせず、設備の特性と必要な機能を理解して構成を選ぶところに、JESDIの電力・制御に関する知見が表れています。

JESDIが大切にすること

JESDI WAY

「つながった」を「正しく動く」まで進める。JESDIは、通信・設備・市場運用の間に入り、指令の意味から異常時の挙動まで確認できる体制をつくります。接続の境界を整えることが、運用を支える仕事です。

結論

通信と制御の難しさは、機器ごとの正しさを、システム全体の正しさへつなぐところにあります。 JESDIは、設計・接続・試験・不具合対応を一つの流れとして進めます。受電後に動かす準備を早く始めることが、市場参入と継続運用への備えになります。

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