その蓄電池は、どこのセルか――20年使う蓄電所でセル品質を確認すべき理由

箱の中のセルから、長く使う条件を確かめる。

蓄電所の中には何千個もの電池セルが入っています。Lishenとはどんなメーカーか、Grade Aとは何か、HOBEが品質をどう確認しているかを解説します。

この記事でわかること

  • Grade Aの意味と、呼び名だけでは分からないこと
  • 中汽新能はどのような電池メーカーか
  • 2,500セルの検査データが示す容量とそろい方
  • セル・BMS・温度管理・EMSの関係
  • 長期運用で保証や交換まで見る理由

セルの品質を理解する

JESDIの視点

Grade Aとは、どのようなセルか

「Grade A」は、容量などの検査を経て、メーカーが所定の品質基準を満たすと判定したセルを指す呼び方です。ただし、表示だけから「10万個に1個以下の不良率」「必ず20年使える」と読み取ることはできません。

何を合格条件とするかは、対象製品の仕様やメーカーの判定基準で確かめます。新品であること、検査に合格したこと、長期間の性能が保証されることも、それぞれ確認する内容が違います。

高圧向けのHOBE蓄電池のメーカー資料にある「Grade A(A5)」も、対象2,500セルに対するメーカーの判定として扱います。「A5」という記号から、世界共通の等級や不良率、他社より上位という意味を推測することはできません。

JESDIの実践

コンテナの名前と、中の電池の名前は同じとは限らない

蓄電所を検討するとき、設備メーカーの名前や容量を見ることは多いでしょう。その設備の中に、どの会社の、どのセルが使われているかも確認したい点です。

セルは電池の基本単位です。複数のセルをつないでまとめたものがモジュール、それを棚状の枠へ収めたものがラックです。さらに管理・制御・温度調整などの仕組みを加えて、蓄電所で使うシステムになります。

HOBE ENERGYは、複数メーカーからセル単位で調達し、プロジェクトに合わせて選定できます。選んだセルに合わせて、モジュール・ラックと自社開発のBMS・EMSを設計できることが強みです。セルメーカーがつくる電池の特性を、システムメーカーの設計によって実際の運用へつなげます。

JESDIの視点

中汽新能は、どのような電池メーカーか

中汽新能※は、中国の自動車大手・中国一汽(FAW)が支配株主となる電池メーカーです。自動車を走らせる車載用と、蓄電所などで使う蓄電用の電池を手がけています。[中国一汽の公式発表](https://wap.sasac.gov.cn/n2588025/n2588124/c33986859/content.html)では、2025年7月に天津で本社拠点が始動したことが公表されています。

※Lishen(力神)系の動力・蓄電池事業の再編に伴い、旧「力神(青島)新能源有限公司」は[2025年7月に「中汽新能電池科技有限公司」へ社名変更](https://www.xinhuanet.com/energy/20260403/f4d8d5bbeda443ada124c5648abd4ce1/c.html)しました。

[力神の公式会社紹介](https://www.lishen.com.cn/category/about.html)では、天津力神の設立は1997年12月25日とされています。中国のリチウムイオン電池事業の初期から研究開発・製造に取り組んできた系譜です。中汽新能は、そのうち動力・蓄電池事業を再編して引き継ぎ、蓄積してきた知見を事業に生かしています。

供給規模も確認できます。[国企誌の2026年4月の報道](https://www.cnsoe.com.cn/zyqy/content_145351.html)によると、同年1〜3月の電池販売量は、容量の合計で2.96GWh(296万kWh)でした。電池を研究するだけでなく、量産して供給する事業基盤があることを示す数字です。これは同社全体の販売量で、HOBE向けセルだけの数値ではありません。

研究開発については、[最高技術責任者のインタビュー](https://www.xinhuanet.com/energy/20260403/f4d8d5bbeda443ada124c5648abd4ce1/c.html)で、中国の国家級研究拠点である「国家リチウムイオン動力電池工程技術研究センター」を活用し、材料、セル、システムへの組み込み、再利用まで取り組んでいると説明しています。量産・供給の実績と、電池を材料から研究する体制の両方が、採用先としての信頼性を評価する材料になります。

HOBEは中汽新能のセル品質を高く評価し、JESDIが高圧向けに採用する構成で使っています。JESDIは、企業の実績に加えて、採用する型番と実際の納入ロットの検査結果を確認します。株主や研究開発の体制だけで、今回のセルの性能や寿命まで決まるわけではありません。

低圧向けは現時点では別の蓄電池を採用する予定です。ここで紹介する中汽新能のセルと2,500セルの検査結果は、高圧向けの対象ロットについての情報です。

2,500個を、一つひとつ確かめられる

高圧向けのHOBE蓄電池に使う314Ahセルの対象ロットは2,500個です。メーカーの資料では、すべてをGrade A(A5)と判定し、新品・未使用で、Grade BやGrade A−、リユース品・解体回収品・修理品を含まないと宣言しています。

さらに、2,500個すべてについて、容量、内部抵抗、電圧などの個別の出荷検査記録があります。一部を抜き取った検査や平均値だけでは見えない、個々の状態まで確認できることがポイントです。全数合格という結果はこのロットについてのもので、今後の故障がゼロという意味ではありません。

容量は「どれだけ電気を出し入れできるか」の目安です。Ah(アンペア時)は電気の量を表す単位で、今回の定格容量は314Ah。実測は337.00〜340.00Ah、平均338.10Ahでした。定格を100とすると、すべてが約107〜108、平均で約107.7に相当します。この出荷検査の値には、定格に対して約7〜8%の余裕があると読めます。

同じくらい重要なのが、2,500個の容量がそろっていることです。平均からのずれは±0.57%以内。平均を100とすると、各セルはおよそ99.7〜100.6の範囲です。最大と最小の差は3Ahで、平均の約0.9%に収まっています。

多くのセルを直列につないだ蓄電池では、容量の小さいセルが先に充放電の限界に達し、全体で使える範囲を制約することがあります。そのため、容量の大きさと、セル同士のそろい方を合わせて見ます。この仕組みは[Texas Instrumentsの技術資料](https://www.ti.com/lit/an/slyt322/slyt322.pdf)でも説明されています。

ただし、この結果は出荷検査の条件で測ったセルの値です。蓄電所で使える電力量には、充放電の設定や機器の損失なども関わります。「売電量が7〜8%増える」「寿命が7〜8%延びる」という意味にはなりません。他製品との比較では測定条件も揃えます。

電気の流れにくさを表す内部抵抗は0.166〜0.178mΩ、平均0.173mΩ。電流を流していないときの電圧は約3.297〜3.299Vで、最大差は0.00270Vでした。これらも容量と合わせて、セルごとの状態やばらつきを見る材料です。単独の数値だけで安全性や寿命の優劣は決められません。

各セルには24桁のレーザー刻印とQRコードがあり、製造ロット、容量測定、出荷検査の記録をたどれるとされています。「この1個はどのような検査結果だったか」まで確認できる仕組みが、導入時の確認と、その後の原因調査を支えます。

セルメーカーの情報と、実際に納入されるセルの検査記録を合わせて確かめる。(概念イラスト)
セルメーカーの情報と、実際に納入されるセルの検査記録を合わせて確かめる。(概念イラスト)

「何回使えるか」には、使い方の条件がある

対象セルのメーカー仕様にある「8,000サイクル以上、定格容量の70%を維持」は、所定の条件で充放電を繰り返したときの容量維持に関する指標です。試験条件と、70%の基準となる容量を合わせて確認します。

充放電の速さ、使う残量の範囲、温度、試験の方法などによって、劣化や使える容量の見通しは変わります。サイクル数だけを抜き出して、事業の年数へそのまま置き換えることはできません。

また、長い期間にわたる変化には、充放電の回数だけでなく、時間の経過も関わります。設備をどの程度動かすかと、どのような環境で置くかを合わせて考えます。

良いセルの特性を、システムで生かす

セルの状態を監視・保護するBMS、温度を調整する冷却設備、充放電を管理するEMSは、セルを使う条件を支えます。

HOBEはBMSとEMSを自社開発しています。セルの充放電特性に合わせた保護の条件と、設備全体を動かす制御を、一連の設計として検討できます。セルの選定からモジュール・ラック、制御までをつなげられることが、良いセルを生かすための強みです。

例えば、残量の上下限に余裕を持たせることや、適切な温度で動かすことは、運用できる範囲と長期の性能に関わります。どこまで使うかは、対象機器の条件や保証、運用計画に合わせて決めます。

JESDIは、RUTILEAが考える運用をHOBE ENERGYの設備・制御と合わせます。セルの品質を、実際の充放電で生かせる条件へつなげることが必要です。

長期運用は、交換できることも含めて考える

蓄電所を長く使ううえでは、不具合や性能の低下が起きたとき、どの単位で交換するのかも重要です。HOBE ENERGYの構成では、モジュール単位での交換を基本に考えます。

その際、交換品の供給、現場の作業、輸送、接続後の確認が必要になります。保証についても、容量に関する条件と、故障時の対応、工事などの費用を分けて確認します。

「20年の事業を考える」ことと、「20年間、交換も費用も発生しない」ことは同じではありません。購入時点から、維持する方法まで見ておく必要があります。

比較するなら、対象のセルと条件を揃える

価格やメーカー名を比較する前に、セルの型番、新品性、Grade Aの判定基準、納入ロット、検査対象数を確認します。そのうえで、容量・内部抵抗などの個体データ、測定条件、識別番号による記録の追跡、保証の対象を揃えます。

メーカー全体への評価と、特定のセルの故障率や寿命は、別の情報です。ランキングやブランドの印象だけで、採用する機器の性能を決めつけないことが大切です。

JESDIが伝えたいのは、内部のセルまで目を向け、その特性を設備と運用へつなぐという選定の姿勢です。

JESDIが大切にすること

JESDI WAY

外側のブランドと容量に加え、実際に届くセルの検査記録と使い方まで見る。JESDIは、HOBE ENERGYのセル選定を、制御・温度管理・運用・交換の条件へつなぎます。長く使う設備だからこそ、一つひとつの中身を確かめるところから設計を始めます。

結論

Grade Aは、セル品質を確認する入口です。メーカーの実績に加え、実際に納入されるセルの容量とばらつき、個別の検査記録、製造履歴をたどれることまで確かめます。 JESDIは、セルを単独の部品としてではなく、蓄電所の運用を支える要素として見ます。特性を理解し、適切に動かし、必要なときに維持・交換できることまでが、長期運用の準備です。

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