会社と工程の間をつなぎ、事業全体を前へ進める。
用地からMarket Entryまで、多数の専門会社と工程を一つにつなぐ。JESDIがプロジェクト全体を横断管理する考え方を紹介します。
この記事でわかること
- JESDIが定義するオーケストレーション
- JESDIが運用開始から逆算して関係者をつなぐ理由
- 各社の境界で生まれる責任の空白
- 週次会議と並行工程によるプロジェクト管理
- 搬入経路の変更や機器到着の遅れに、実案件でどう対応したか
本編
オーケストレーションを理解する
オーケストレーションとは
系統用蓄電所の開発には、土地所有者、事業者、電力会社、EPC、蓄電池・PCS・EMSメーカー、アグリゲーター、行政、投資家など、多くの関係者が携わります。
JESDIがいうオーケストレーションとは、これらの専門企業を施主側から横断して統括し、会社と会社、工程と工程の境界に生まれる責任の空白をなくすプロジェクトマネジメントです。
JESDIは施主側でプロジェクト全体の管理を主導し、自ら現場や近隣の状況を確認します。EPC、設備会社、アグリゲーターとの調整に入り、プロジェクト全体を主体的に動かします。
各社の仕事をつなぐだけでなく、会社と会社の間で決まっていないことを見つけ、決めて、前へ進める。その指揮を執るのがJESDIの役割です。
JESDIの視点
JESDIは「運用開始」から逆算する
EPCは、Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)を担います。JESDIがプロジェクト全体で見ているのは、その先にある運用開始と継続的な収益化です。
設備が完成し、電気が流れても、それだけで市場での運用が始まるわけではありません。設備を制御する仕組みと、アグリゲーターが市場で運用する仕組みがつながり、必要な試験や審査を終えて、初めて収益化へ進めます。
そこでJESDIは、プロジェクトの初日から、設備メーカー、施工会社、電力会社、アグリゲーターをつなぎます。運用開始に必要な条件を設計段階へ戻し、機器の仕様、工事、通信、試験を一つの計画として組み立てます。
「誰が、いつまでに、何を決めれば運用開始へ進めるか」。この問いを、土地の検討段階から持ち続けることが、JESDIのオーケストレーションです。

JESDIの視点
「誰の仕事でもない仕事」が生まれる
JESDIが特に目を向けるのは、各社の専門領域の間にある境界部分です。各社が自分の仕事を完了していても、そのつなぎ目に課題が残れば、プロジェクト全体は先へ進めません。
系統工事と建設工事の境界
電力会社側で電柱の位置や工事日程が変わると、設備の搬入経路や建設工程へ影響します。しかし、電力会社、EPC、運送会社が個別に自分の工程だけを見ていると、全体の組み替えを判断する人がいません。
EPCと設備メーカーの境界
電気を変換するPCS、設備を制御するEMSの仕様、ケーブル、据付順序、試験方法などで不整合が起きることがあります。「メーカー仕様どおり」「図面どおり施工した」という説明だけでは、システム全体の不具合は解決しません。
EPCとアグリゲーターの境界
通信仕様、システム同士の接続、EMSの設定、機器間の時刻合わせ、指令への応答性能、市場参入試験などは、複数社の設備と業務にまたがります。受電後に初めてすり合わせると、原因の切り分けや再試験に時間がかかります。
JESDIは、こうした「誰の担当でもない仕事」を明示し、責任者、期限、判断事項を管理します。
関係者を横並びでつなぐ
JESDIは、EPC、設備メーカー、アグリゲーターを横並びにつなぎ、プロジェクト全体を管理します。関係するのは、次のようなプレイヤーです。
- プロジェクトオーナー・投資家
- 土地所有者・不動産会社
- 電力会社
- EPC・施工会社
- 蓄電池・PCS・EMSなどの設備会社
- HOBE ENERGY
- 市場での運用を担うアグリゲーターであるRUTILEA
- 行政・消防
各社の契約範囲と責任を明確にしながら、他社に影響する情報と課題を早期に共有します。自社の担当範囲を守ることと、プロジェクト全体の課題を共同で解決することを両立させます。
定例会議で管理すること
JESDIは週次の定例会議を主導し、各社に影響するタスクと、遅れると全体の完成時期を左右する工程を重点的に管理します。
例えば、蓄電池とキュービクルの搬入時期は、電力会社側の電柱工事、施工会社の基礎工事、クレーンの手配と連動します。
定例会議では、主に次の内容を確認します。
- 現在の工程と次の節目
- 他社へ影響するタスク
- 課題とリスクの影響範囲
- 責任者と対応期限
- 仕様変更・工程変更の判断
- 遅延時のリカバリー案
- 運用開始へ向けた試験・通信準備
計画との差が生じたときは、単に遅れを報告するのではなく、何を前倒しし、何を組み替えるかをその場で判断します。
工程を直列ではなく並列にする
メーカーの製造、輸送、施工、受電、通信試験、市場参入。それぞれの工程で、前の仕事が終わってから次の準備を始めれば、待ち時間が積み重なります。
JESDIは、前提条件を早期に整理し、可能な工程を並行して進めます。
設備の製造中に基礎工事や配線準備を進め、受電前からアグリゲーターと通信・試験条件を確認します。一つの工程が遅れても、プロジェクト全体を止めないよう、別の工程を前倒しします。
JESDIの実践
実案件での問題対応
ある案件では、電力会社側の工事変更により、当初想定していた大型設備の搬入経路が使えなくなる問題が発生しました。
JESDIは問題を把握した段階で施工会社、運送会社、関係者を集め、代替経路と施工手順を再設計しました。
別の案件では、輸出管理・税関手続きの変更によって追加資料が必要となり、機器到着が遅れる可能性が生じました。機器を待って工事全体を止めるのではなく、施工会社と基礎工事や配線準備を前倒ししました。
重要なのは、問題が一切起きないことではありません。問題が起きたとき、誰が全体への影響を見て、工程を組み替えるかです。
オーケストレーションが生む成果
オーケストレーションの成果は、単なる会議回数ではなく、事業全体の最適化に表れます。
JESDIの視点
初期投資の最適化
RUTILEAが市場運用と制御方法を設計し、HOBE ENERGYが設備・制御で実現可能かを検証します。そのうえでJESDIが事業収支と投資回収を踏まえ、必要容量を判断します。
設備を大きくすること自体を目的にせず、市場で必要な性能と運用機会を見極め、過剰な設備投資を抑えます。容量を増やす価値と費用を一緒に考えることで、投資額に対してどのような運用ができるかを判断します。
この三者の連携によって、設備の仕様と事業収支を一体で設計できることも、JESDIのオーケストレーションの特徴です。具体的な容量設計はI-02|2MW/8MWhは本当に必要か――JESDIが4〜5MWhを基本設計とする理由で詳しく説明します。
早期の運用開始
JESDIが目指すのは、設備に電気が入る受電から、需給調整市場で実際に運用を始めるまでを短くすることです。愛荘町は55日、上奈良は81日で、その工程を進めました。
JESDIが把握する他社事例には、受電から需給調整市場での運用開始まで半年以上かかったものや、運用開始に至っていないものもあります。半年を業界共通の標準期間とするのではなく、実際に必要な準備と工程を比較することが大切です。
この速さを支えるのは、工事中から進める通信・試験の準備と、設備メーカー、アグリゲーター、施工会社をつなぐ全体管理です。受電を待たずにできることを進め、必要な確認を確実に完了させます。
稼働後の通信・制御リスクの低減
蓄電所は土木・電気設備であると同時に、リアルタイムで制御されるITシステムです。設備が動いても、対象市場で求められる制御・応答を満たせなければ、その市場での収益化へ進めません。
HOBE ENERGYとRUTILEAを設計段階から加え、通信仕様、制御ロジック、試験項目を事前に合わせます。建設・引渡しで終わらず、市場で安定稼働するところまでを一つのプロジェクトとして管理します。
JESDIが大切にすること
JESDI WAY
各社の専門性を尊重しながら、責任の隙間を埋め、運用開始から逆算して工程を並列化する。問題が起きても全体を止めず、次の最善手を決め続けることがJESDIのオーケストレーションです。
結論
系統用蓄電所では、多数の専門会社が関わります。各社が契約範囲の仕事を完了しても、境界にある仕様、工程、通信、責任の問題が残れば、プロジェクトは動きません。
JESDIは施主側からEPC、設備会社、電力会社、アグリゲーターを横断して管理し、運用開始・収益化までを一つのゴールとして工程を設計します。
責任者と期限を明確にし、他社へ影響する情報を共有し、工程を並行して進める。それが、手戻りを減らし、早期の運用開始と安定稼働を実現するためのオーケストレーションです。
