系統用蓄電所では、各社が自分の仕事を完了しても、プロジェクト全体が完成するとは限りません。JESDIは施主側からEPC、メーカー、電力会社、アグリゲーターを横断して統括し、運用開始・収益化までを管理します。

30秒で分かる結論

  • 最終結論:EPCの主要な責任範囲は一般に設備完成・受電までです。JESDIは、土地取得から運用開始・継続稼働までを一つのプロジェクトとして統括します。
  • 解決する問題:トラブルが起きやすい会社間・工程間の責任の空白を埋め、誰が・いつまでに・何を決めるかを明確にします。
  • 実行方法:EPC、設備会社、電力会社、RUTILEAを早期につなぎ、週次管理と工程の並行化によって受電後の手戻りを減らします。

この記事で分かること

  • JESDIが定義するオーケストレーション
  • 一般的なEPC中心型との違い
  • 各社の境界で生まれる責任の空白
  • 週次会議と並行工程によるプロジェクト管理
  • 実案件で回避した手戻りと遅延

結論

EPCの完成・受電をゴールにせず、運用開始と継続的な収益化から逆算して、関係者と工程を一つに束ねる。それがJESDIのオーケストレーションです。

オーケストレーションとは

系統用蓄電所の開発には、土地所有者、事業者、電力会社、EPC、蓄電池・PCS・EMSメーカー、アグリゲーター、行政、投資家など、多くの関係者が携わります。

JESDIがいうオーケストレーションとは、これらの専門企業を施主側から横断して統括し、会社と会社、工程と工程の境界に生まれる責任の空白をなくすプロジェクトマネジメントです。

通常、建設工程はEPCへ任せるケースが多くあります。JESDIは施主側でPMを主導し、自ら現場や近隣の状況を確認します。EPC、設備会社、アグリゲーターにガバナンスを効かせ、プロジェクト全体を主体的に動かします。

EPC中心型との違い

EPCは、Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)を担い、一般的には受電・引渡しまでを主要な責任範囲とします。

JESDIが管理するゴールは、設備の完成や受電だけではありません。市場で運用を開始し、収益化した後も安定して稼働できる状態までをプロジェクトとして捉えます。

EPCは受電までを担い、JESDIは運用開始と継続的な収益化から逆算してプロジェクト全体を管理します。

EPC中心型そのものが悪いわけではありません。問題は、EPCの責任範囲と、メーカー・アグリゲーター・電力会社の責任範囲の間に、誰も全体を判断しない領域が生まれることです。

「誰の仕事でもない仕事」が生まれる

トラブルが起きやすいのは、各社の専門領域の中ではなく、その境界部分です。

系統工事と建設工事の境界

電力会社側で電柱の位置や工事日程が変わると、設備の搬入経路や建設工程へ影響します。しかし、電力会社、EPC、運送会社が個別に自分の工程だけを見ていると、全体の組み替えを判断する人がいません。

EPCと設備メーカーの境界

PCS・EMSの仕様、ケーブル、据付順序、試験方法などで不整合が起きることがあります。「メーカー仕様どおり」「図面どおり施工した」という説明だけでは、システム全体の不具合は解決しません。

EPCとアグリゲーターの境界

通信仕様、API接続、EMS設定、時刻同期、応答性能、市場参入試験などは、複数社の設備と業務にまたがります。受電後に初めてすり合わせると、原因の切り分けや再試験に時間がかかります。

JESDIは、こうした「誰の担当でもない仕事」を明示し、責任者、期限、判断事項を管理します。

関係者を横並びでつなぐ

JESDIは、EPCを頂点に他社を縦につなぐのではなく、プロジェクトに必要な関係者を横断して管理します。

  • プロジェクトオーナー・投資家
  • 土地所有者・不動産会社
  • 電力会社
  • EPC・施工会社
  • 蓄電池・PCS・EMSなどの設備会社
  • HOBE ENERGY
  • アグリゲーターであるRUTILEA
  • 行政・消防

各社の契約範囲と責任を明確にしながら、他社に影響する情報と課題を早期に共有します。自社の担当範囲を守ることと、プロジェクト全体の課題を共同で解決することを両立させます。

定例会議で管理すること

JESDIは週次の定例会議を主導し、各社に影響するタスクとクリティカルパスを重点的に管理します。

例えば、蓄電池とキュービクルの搬入時期は、電力会社側の電柱工事、施工会社の基礎工事、クレーンの手配と連動します。

定例会議では、主に次の内容を確認します。

  • 現在の工程と次の節目
  • 他社へ影響するタスク
  • 課題とリスクの影響範囲
  • 責任者と対応期限
  • 仕様変更・工程変更の判断
  • 遅延時のリカバリー案
  • 運用開始へ向けた試験・通信準備

計画との差が生じたときは、単に遅れを報告するのではなく、何を前倒しし、何を組み替えるかをその場で判断します。

工程を直列ではなく並列にする

一般的なプロジェクトでは、メーカーの製造、輸送、施工、受電、通信試験、市場参入が順番に進みます。前工程が終わるまで次の会社が動かなければ、全体期間は長くなります。

JESDIは、前提条件を早期に整理し、可能な工程を並行して進めます。

設備の製造中に基礎工事や配線準備を進め、受電前からアグリゲーターと通信・試験条件を確認します。一つの工程が遅れても、プロジェクト全体を止めないよう、別の工程を前倒しします。

実案件での問題対応

ある案件では、電力会社側の工事変更により、当初想定していた大型設備の搬入経路が使えなくなる問題が発生しました。

JESDIは問題を把握した段階で施工会社、運送会社、関係者を集め、代替経路と施工手順を再設計しました。

別の案件では、輸出管理・税関手続きの変更によって追加資料が必要となり、機器到着が遅れる可能性が生じました。機器を待って工事全体を止めるのではなく、施工会社と基礎工事や配線準備を前倒ししました。

重要なのは、問題が一切起きないことではありません。問題が起きたとき、誰が全体への影響を見て、工程を組み替えるかです。

オーケストレーションが生む成果

オーケストレーションの成果は、単なる会議回数ではなく、事業全体の最適化に表れます。

初期投資の最適化

RUTILEAが市場運用と制御方法を設計し、HOBE ENERGYが設備・制御で実現可能かを検証します。そのうえでJESDIが事業収支と投資回収を踏まえ、必要容量を判断します。

設備を大きくすること自体を目的にせず、市場で必要な性能を維持しながら過剰投資を減らします。具体的な容量設計と、JESDIが基本構成を提案する理由は、I-02の記事で詳しく説明します。

早期の運用開始

メーカー、施工会社、アグリゲーター、電力会社の工程を可能な範囲で並行化します。その結果、JESDIには受電後55日、約2.5か月、受電後工程最短5日間で運用開始へ進めた実績があります。

稼働後の通信・制御リスクの低減

蓄電所は土木・電気設備であると同時に、リアルタイムで制御されるITシステムです。設備が動いても、市場からの指令へ正しく応答できなければ収益化できません。

HOBE ENERGYとRUTILEAを設計段階から加え、通信仕様、制御ロジック、試験項目を事前に合わせます。建設・引渡しで終わらず、市場で安定稼働するところまでを一つのプロジェクトとして管理します。

**JESDI WAY**

各社の専門性を尊重しながら、責任の隙間を埋め、運用開始から逆算して工程を並列化する。問題が起きても全体を止めず、次の最善手を決め続けることがJESDIのオーケストレーションです。

まとめ

系統用蓄電所では、多数の専門会社が関わります。各社が契約範囲の仕事を完了しても、境界にある仕様、工程、通信、責任の問題が残れば、プロジェクトは動きません。

JESDIは施主側からEPC、設備会社、電力会社、アグリゲーターを横断して管理し、運用開始・収益化までを一つのゴールとして工程を設計します。

責任者と期限を明確にし、他社へ影響する情報を共有し、工程を並行して進める。それが、手戻りを減らし、早期の運用開始と安定稼働を実現するためのオーケストレーションです。

次に読む記事

  • P-02|系統用蓄電所プロジェクトとは何か
  • I-05|なぜ蓄電所では「統合設計」が重要なのか(公開予定)
  • M-01|「受電」と「運用開始」は何が違うのか(公開予定)
  • R-02|55日、2.5か月、最短5日間 – 数字で見るJESDI(公開予定)

参考資料

  • 日本蓄電開発機構「日本蓄電開発機構 説明資料(FULL)」2026年7月版
  • 日本蓄電開発機構「社内質問・回答票」2026年7月版