市場で求められる働きから、蓄電所を設計する。

蓄電所の収益は、電気を安く買って高く売るだけではありません。卸電力市場や需給調整市場など、主な収益源を整理します。

この記事でわかること

  • 蓄電所が収入を得る3つの市場の違い
  • 「電気を売る」と「調整できる能力を提供する」の違い
  • JESDIが一次調整力を含む運用に対応ししていることの意味
  • 複数の市場を組み合わせるときに必要な考え方
  • 市場の仕組みと設備設計が切り離せない理由

蓄電所の収益市場を理解する

JESDIの視点

蓄電所は、何を売っているのか

「昼間に安い電気をため、夕方に高く売る」。蓄電所の収益を、このようにイメージする方は多いと思います。

これは大切な役割の一つです。ただ、それだけでは、JESDIがなぜ蓄電池メーカーや市場運用会社と一緒に設備を設計しているのかは見えてきません。

蓄電所には、電気を売るほかに、電力が不足したり余ったりしたときに動いて、需給のバランスを支える仕事があります。さらに、将来必要なときに電気を供給できる能力にも価値があります。

まずは、主な3つの市場を「何に対してお金が支払われるのか」で分けてみます。

1.卸電力市場――電気そのものを売買する

日本卸電力取引所(JEPX)などで取引されるのは、電気そのものです。蓄電所は、価格が安い時間帯に電気を購入して充電し、価格が高い時間帯に放電・売却することで、価格差から収益を得ます。

ただし、買った電気のすべてを、そのまま売り直せるわけではありません。充電・放電や電力変換の過程でロスが生じ、運用にも費用がかかります。売却代金から、購入費やロスに伴う費用、手数料などを差し引いて、初めて採算が見えてきます。

ここで見る単位がkWhです。これは電気の「量」を表します。例えば、1,000kWの出力で30分間放電した場合、電力量は500kWhになります。

2.需給調整市場――必要なときに動ける能力を提供する

需給調整市場は、一般送配電事業者が周波数と需給バランスを維持するために必要な調整力を調達する市場です。電気を使う量と作る量のバランスを保つ役割があります。太陽光の発電量が予想より少ない、電気の使用量が急に増える。そうしたずれに対応するための調整力を取引するのが、需給調整市場です。

ここでは「どれだけ電気を売ったか」に加え、「必要なときに、どれだけ出力を変えられる状態を確保しているか」が価値になります。

その調整できる出力の幅を表すのが、ΔkWです。Δは「デルタ」と読み、変化量を意味します。例えば、500kWで放電している状態から1,500kWまで増やせるなら、上げ方向の調整幅は1,000kWです。

電気の量を示すkWhと、動かせる出力の幅を示すΔkWは別のものです。実際に大きく動かなかった時間でも、約束した能力を確保していることには価値があります。一方、必要なときに動けなければ、その約束を果たしたことにはなりません。

蓄電池の残量、制御、通信、設備の状態を管理する必要があるのは、このためです。また、能力を確保する対価と、実際の電気の購入・売却や精算は分けて収支を考えます。

需給調整市場には、応答の速さや役割の異なる一次調整力、二次調整力①・②、三次調整力①・②があります。制度の概要は、[電力需給調整力取引所「需給調整市場とは」](https://www.eprx.or.jp/outline/outline.html)で確認できます。

3.容量市場――将来の供給力を支える

容量市場は、将来、電気が必要になったときに供給できる能力を、あらかじめ確保する仕組みです。

通常のメインオークションでは、原則として4年後の供給力を確保します。落札した事業者は、対象年度に求められる供給力を提供するなどの義務を果たすことで、契約に基づく対価を得ます。[電力広域的運営推進機関「容量市場の構成」](https://www.occto.or.jp/capacity-market/yoryoshijyo/objective/)

蓄電所にとっては、日々の電気の売買とは別に、設備を維持し、必要時に供給できる状態を整えることから得る収入になり得ます。ただし、設備の定格出力が、そのまますべて取引できる供給力になるわけではありません。蓄電池の容量や供給を続けられる時間なども関係します。

同じ出力の蓄電所でも、どの運用を組み合わせるかによって必要な容量や運用方法が変わるのです。

電気・調整力・将来の供給力。市場ごとに対価の対象が異なる。(概念イラスト)
電気・調整力・将来の供給力。市場ごとに対価の対象が異なる。(概念イラスト)

JESDIの実践

厳しい要件にも応えられる設備と体制をつくる

JESDIは、一次調整力にも参入できる計測・制御・試験の体制を整えています。一次調整力は、電力の周波数の変化を設備自身が検知し、すばやく出力を調整する働きです。

RUTILEAが市場の要件と運用方法を整理し、HOBE ENERGYが必要な動きを機器と制御で実現する。JESDIが投資額、工事、接続、試験をつなぎます。この連携を、設備仕様を決める段階から進めます。

市場の選択は、完成後に入札先を選ぶだけの話ではありません。容量、制御、計測、試験の準備まで関わる、開発の出発点です。

JESDIの視点

市場を組み合わせても、収入を単純に足せるわけではない

複数市場への対応力を持ち、設備と登録の条件が整った範囲で運用を選ぶ。JESDIは、そのための設備・制御・運用体制を整えます。

ただし、一つの蓄電池には出力と電力量の限りがあります。ある時間帯に約束した調整力を、別の取引にも重複して使えるわけではありません。放電した後は、次の約束に備えて充電する必要もあります。

そのため、RUTILEAが市場ごとの機会と設備の状態を見ながら運用を組み、HOBE ENERGYと制御をすり合わせます。市場制度や運用戦略が変わったときにも、設備側の設定・改修までつながる体制が重要になります。

市場価格、取引できる量、充電費用、稼働状況、制度変更によって収支は変わります。収益シミュレーションを見るときには、売上の数字だけでなく、どの市場・単価・取引量・費用を前提にしたものかを確認する必要があります。

JESDIが大切にすること

JESDI WAY

蓄電所の収益は、設備を買った後で市場に任せれば決まるものではありません。どこで価値を提供し、どう動かすかを考え、その運用に合う設備と制御をつくる。JESDIは、市場運用から逆算して蓄電所を設計し、早期の収益化と、その後の運用の広がりをつなぎます。

結論

系統用蓄電所が対価を得るのは、電気の売買、需給を調整する能力、将来の供給力という異なる価値からです。

JESDIは、その仕組みを説明するだけでなく、どの価値をどの運用で提供するかを設備づくりへ反映します。市場運用・設備・開発工程を一緒に考えることが、収益化までを見据えたJESDIの蓄電所づくりです。

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