数字ではなく、前提・技術・実績を見る。
アグリゲーターから示される「年間収益」だけでは、運用を任せられるかは判断できません。収益計画の前提、技術者体制、受電から市場参入・取引・精算までの実績を確認する方法を解説します。
この記事でわかること
- 収益シミュレーションで最初に見る前提
- 上限価格と実際の約定価格の違い
- 技術者体制・試運転実績を見る理由
- 受電・市場参入・取引・精算を分けて確認する方法
- 長期運用で障害対応・監視体制が重要な理由
アグリゲーター選びを理解する
JESDIの視点
「年間○億円」より先に、前提を聞く
収益シミュレーションは、計算式の答えです。答えだけを見ても、その数字が現実的かどうかは判断できません。
まず確認したいのは、どの市場の、どの期間の単価を使っているか。1日に何コマ応札できる前提か。年間何日稼働するのか。約定率を何%で置いているのか。充電に必要な時間や、設備を市場へ出せない時間をどう扱っているのか。
さらに、充電電力費、アグリゲーター手数料、通信・監視、O&M、保険、税、充放電ロス、将来の交換費まで含めます。
高い数字が悪いのではありません。大切なのは、その数字をつくった前提を開示し、購入者が自分でも再計算できることです。
JESDIの視点
上限価格は、売上を約束する価格ではない
需給調整市場には制度上の上限価格がありますが、それは「毎回その価格で約定する」ことを意味しません。実際の収益を考えるときは、対象エリア・商品の直近の約定実績を見て、将来は複数のシナリオを置くほうが現実的です。
「現在の市場環境が続くケース」「価格が低下するケース」などを分け、同じ設備がどこまで成立するのかを確認します。
JESDIは、上限価格をそのまま収益前提にするのではなく、実際の市場データと運用条件を分けて考えることが重要だと考えています。
JESDIの視点
約定率と稼働率を、売上の数字の後ろに隠さない
市場へ出せる時間と、実際に約定する時間は同じではありません。設備のSOC、充電時間、停止時間を考えると、すべてのコマへ同じ条件で応札できるわけではありません。
シミュレーションでは「応札できるコマ数×約定率」を分け、実績では「実際に何コマ応札し、何コマ約定したか」を月次で確認します。
また、売上だけでなく、供出できなかった時間やアセスメントの結果も重要です。数字が大きいか小さいかより、その数字が運用実績とつながっているかを見ます。

JESDIの実践
技術者がいるか。市場と設備の両方を理解しているか
蓄電所の市場運用は、トレーディングだけでは成立しません。電気、PCS、EMS、通信、計測、試験、市場制度がつながっています。
アグリゲーターを選ぶときは、「誰が、どの工程を担当するか」を具体的に確認します。設備メーカーとの接続仕様を誰が詰めるのか。指令と計測値の整合を誰が確認するのか。試験で必要なデータを誰が取得し、送配電事業者の質問へ誰が答えるのか。
市場制度に詳しくても設備を理解できなければ、障害の切り分けに時間がかかります。逆に設備だけ分かっても、市場審査と運用を進めることはできません。両方をつなぐ体制が必要です。
JESDIの実践
「受電実績」ではなく「市場参入まで」を聞く
設備が受電したことは重要な節目ですが、アグリゲーターの運用実績を見るなら、その後にどこまで進んだかを確認します。
聞くべきなのは、受電した案件数だけではありません。受電から市場取引開始まで何日だったか。どの商品へ参加したか。どの一般送配電事業者エリアで経験があるか。事前審査・実働試験をどのように進めたか。
JESDIの高圧4案件は、一次調整力の市場参入まで、愛荘町55日、上奈良81日、七本木77日、鉢形71日でした。JESDIはこうした「受電→市場参入」の実績を、アグリゲーターの運用力を確認する一つの物差しにしています。

JESDIの視点
市場参入の後に、取引・アセスメント・精算がある
市場参加資格を得ても、それだけで収益実績とは言えません。入札し、約定し、実際に供出し、アセスメントを経て精算されるところまでが継続運用です。
EPRXは、アセスメント不適合の内容によって是正勧告や取引停止等を行うことがあり、その処分・解除を公表しています。つまり、市場へ入った後も、約束した能力を継続して提供する管理が必要です。
アグリゲーターには、取引会員であることに加えて、月次の取引・運用・精算を回し続けた実績を確認します。可能であれば、対象エリアの運用レポートや精算書の様式、確認できるトラックレコードを見せてもらうとよいでしょう。
JESDIの視点
障害が起きたとき、誰が切り分けるのか
蓄電所が止まったとき、原因は一つとは限りません。通信、アグリゲーター側の指令、EMS、PCS、蓄電池、現地設備など、複数の可能性があります。
そこで重要になるのが、異常発生時の対応フローです。最初に誰がアラートを受けるか。遠隔で何を確認するか。現地へ誰が行くか。設備側・通信側のどこに原因があるかを誰が切り分けるか。復旧後の再確認を誰が段取るか。
O&Mとアグリゲーターが別会社の場合も多いため、平時から役割と連絡経路を決めておく必要があります。収益を止めないためには、問題が起きないことだけでなく、起きたときに動ける体制が重要です。
JESDIの視点
監視画面と月次レポートを、契約前に見せてもらう
「24時間監視」「レポート提供」と書いてあっても、実際に何を見るのかはサービスごとに違います。契約前には、監視画面や月次報告のサンプルを確認すると、運用の実像が分かりやすくなります。
SOC、稼働状態、アラーム、約定結果、充放電実績、費用、停止履歴など、どの情報が事業者へ返ってくるのか。問い合わせ窓口や障害時の連絡経路はどうなっているのか。
アグリゲーターを比較するときは、未来の収益表だけでなく、運用が始まった後に毎月受け取る情報まで確認することが大切です。
JESDIの実践
アグリゲーター選定で確認したい10項目
1. 収益シミュレーションの市場単価・期間・応札戦略 2. 応札可能コマ数、約定率、年間稼働日数 3. 充電費、手数料、通信、O&M、保険、税、損失、将来交換費 4. EPRX取引会員としての現在の資格 5. 対象エリア・対象商品での市場参入実績 6. EMS・PCS・通信を理解する技術者体制 7. コミッショニング・事前審査・実働試験の経験 8. 入札・約定・供出・アセスメント・精算の実績の有無 9. 想定する運用と障害時の対応 10. 月次レポートと事業者への説明・問い合わせ体制
この10項目をそろえると、収益予測の大きさだけに引っ張られず、実際に運用を任せられるかを比較しやすくなります。
JESDIが大切にすること
JESDI WAY
大きな数字より、再計算できる前提を見る。資格より、実際の市場参入を見る。機能一覧より、担当者と証拠を見る。JESDIは、アグリゲーターを「収益を約束する会社」ではなく、設備を市場で動かし続けるパートナーとして評価します。
結論
アグリゲーター選びでは、収益シミュレーションの数字をそのまま信じるのではなく、単価・約定率・稼働率・費用などの前提を分解し、自分でも再計算できる状態にすることが重要です。そのうえで、技術者体制、試運転・市場審査の経験、受電から市場参入までの実績、取引・精算、障害対応を確認します。良いアグリゲーターは、未来の最大値ではなく、過去と現在の実績、そして実現方法を説明できます。
